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株式会社文化工房は2020年11月8日、「BK PR MTG 2020 Vol.2 伝わる広報が未来を変える」をオンラインで開催しました。9月6日に開催した第1回に引き続き、これからの行政広報の在り方について考える本ミーティング。今回は東京都杉並区広報専門監ならびに静岡県知事戦略局広報アドバイザーを務める谷浩明氏(クリエイティブディレクター/合同会社MACARON 代表)をゲストスピーカーに迎え、デザインとコミュニケーションの視点から「伝わる広報」を探りました。
なお、オンライン配信には150人の申し込みがあり、第1回目同様に自治体職員のほか、民間企業等で広報業務に当られている方々にご参加いただきました。

「住民に“伝わるコミュニケーション”をデザインしよう」谷氏講演レビュー

谷氏は冒頭、講演の心構えとして参加者に「お願い」をした。
「ご自身が普段から行っている広報活動・情報発信を振り返りながら、参加してください」「ご自身の『広報に対する新たな考え・気づき』を持ち帰り、行動することを目指してください」という2点だ。
この、「こうしたらより有意義な時間になる」ということを先に伝える構成は、まさにこの後50分にわたって話す「伝えるためのコミュニケーション」の実践であった。

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広報ってなんだろう?

自己紹介に続き「広報ってなんだろう?」というテーマに移った。参加者には事前に同じ質問が投げかけられており、その回答を集約したのが下記である。

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広報の役割は多様だが、中でも重要なのは「人が行動し、新しいことを始めるきっかけ」になることと話した谷氏。日々の広報業務も「人がどうやったら行動したくなるか、行ってみたくなるか」を考えて行うと情報の質が変わってくるという。

広報とは、英語ではPR(パブリックリレーションズ)であり、直訳すると「公との関係を構築するためのもの」である。広聴と広報、すなわち「広く聞いて、それを知らせる」ことがセットになっているのだが、広く知らせるという部分だけを意識している人が多い。行政広報ならまず、住民の声を広く聞くことが第一で、様々な工夫をしてそれを広く知らせるという仕組みができると、本来的な広報になる。
谷氏は「広報はパブリックリレーションズであることを踏まえ、組織において人々とよりよい信頼関係を作り出すために行う誠実なコミュニケーション機能」と考えている。つまり、チラシや広報誌、SNSなどの行政広報は、役所の中の重要な「機能」であり、住民や団体と行った「人」と関係を構築するためのツールというのだ。例えば職場での人間関係づくりでも、誠実で謙虚で思いやりのある姿勢が大切になるが、広報においても人々との関係づくりが目的である以上、同じであると。発信する情報に対しても、目の前の人を相手にすると同じ姿勢で向き合うことが求められる。

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コミュニケーションとデザイン

広報におけるコミュニケーションを重視する谷氏は、まず「コミュニケーションとは何か」について語った。コミュニケーションには伝達モデル(One-wayコミュニケーション)と交流モデル(Two-wayコミュニケーション)という2つのメカニズムがある。前者のコミュニケーションは「メッセージを伝えること」であり、送り手からメッセージを受け手に流すだけで一方的。これは行政広報でも行いがちで、役所から住民に向けて送ったメッセージは、受け手がどのように捉え伝わったのかわからないのだが、このモデルだと「伝えた」ことになる。

重要なのは後者で、キャッチボールのようなコミュニケーションのモデルである。役所が住民に情報を発信し、それを受け取った住民が反応し、何らかの行動を起こす。それが繰り返されることで両者の関係が深まっていく。これを実現するために谷氏が勧めるのは「『共通ワード』を送り手と受け手の間に乗せて、メッセ―ジとして発信する」こと。初対面の人と関係を深める際に共通点を探るのと同じだ。そのために必要になるのは広聴で、受け手である住民が欲しい情報を聞いておけば、その「共通ワード」を見つけやすくなる。また、広聴に基づいた広報には、基本的にリアクションがあるという。住民の声を聞いたうえで情報発信してるので、それは住民のニーズとして顕在化されており、行動変容につながるのだ。

続いて、デザインの話題に移った。デザインにも狭義と広義の2種類があるという。狭義では「ものに形を与えて見た目を整えること」で、こちらが一般的なデザインに対しての理解であろう。広義では「ものを作る全体の工程におよび、制作にとどまらず調査や分析、設計も含めた計画そのものから課題解決するまで」を、ひとくくりにしてデザインという。この広義のデザインこそ、コミュニケーションをデザインすることのキーポイントになる。

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コミュニケーションをデザインする

行政広報の場合、狭義のデザインにとどまらず、住民への調査・分析を基に発信する情報に合わせた媒体(SNS等も含む)の選択や組み合わせ、発行スケジュールを計画することが重要で、谷氏は自身が広報専門監を務める杉並区の事例を出しながらその有効性を説明した。
コミュニケーションをデザインする前に「情報発信の手順」と「その情報をどこで知ってもらうのか」の2点を確認することがまず必要になる。その際に効いてくるのが広聴で集めた住民(ターゲット)の情報であり、ターゲットの生活スタイルなどを基に、最も効果的な計画をデザインするのだ。「情報発信のツールとその組み合わせは何が良いか」「情報を発信するタイミングは」など、ターゲットへのコミュニケーション方法次第で、成果は大きく変わる。

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杉並区ではプレスリリース、広報誌、facebook、Twitter、HP、YouTubeを主要ツールとし、各サービスの役割や特徴を把握した上で、発信する情報のターゲットに合わせてその組み合わせを変えている。まさにコミュニケーションをデザインしており、その効果はフォロワー数などの数値にはっきりと表れるという。

これからの行政広報に必要なキーワード

行政広報の場合「情報を伝えたいのは住民すべて」となりがちであるが、送り手側でターゲットを広げた情報は、受け手にもあいまいに伝わってしまう。実際、コロナ禍当初の情報発信はそのようなものが多く、情報はうまく伝わったとは言い難い。また、現在の情報受信環境は多様で、スマートフォン中心の人もいれば紙媒体のみの人もいるので、ツールの選択という問題もある。そこで谷氏は送り手が心がけるキーワードを提示した。(下スライド画像参照)

実際、役所の組織自体も子育てやまちづくりなど様々な行政サービスをカテゴライズして、ターゲティングしている。同じように媒体全体ではオールターゲットであっても、コンテンツごとにはターゲティングできるはず。その情報を発信する目的をあらためて考え、ターゲットはどんな人たちなのかということを具体的に思い描くことこそ、受け手からのリアクションも期待できる「伝わる広報」になるはず。谷氏はそうターゲティングの重要性を挙げ、まとめとした。

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「メディア同士の連携による
リニューアル戦略」講演レビュー

続いて、当社・文化工房の永井チームリーダーが「メディア同士の連携によるリニューアル戦略」について、「広報すぎなみ」のリニューアル事例(2017年度)を基に話しました。なお、当社は「広報すぎなみ」など25自治体8省庁・団体の広報誌・紙の制作を請け負っています(2020年4月1日現在)。
杉並区からの要望に対し、①オールカラーにしてデザインを一新、②月2回発行に減らしたうえで特集面を充実、③情報の視認性・検索性の向上の3点をポイントにした誌面リニューアルで応えただけでなく、広報誌以外の媒体も連携させることを提案。2019年度からは広報誌の特集連動動画を自社制作し、YouTubeで公開しています。
従来のメディア以外にも動画やSNS、WEB広報誌という様々なツールを活用して行政広報の入り口を増やすことは、これまで自治体との接触機会が少なかった層に新たなチャネルを開くことになります。広報誌のリニューアルの際には誌面デザインだけでなく、住民の情報受信環境の多様化に対応した新たなメディア連携も視野に入れてはいかがでしょうか。

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トークセッション「伝わる広報が
未来を変える」講演レビュー

「広報すぎなみ」の特集連動動画「すぎなみビトMOVIE」視聴後、谷氏と永井のトークセッションとなりました。同動画の話題に続き、事前に参加者からいただいた質問に谷氏が答えました。

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特集連動動画「すぎなみビトMOVIE」について

:私も紙媒体と動画をどうミックスさせればいいかということを考えていたので、実現できてよかったです。広報誌を読む方には「お得感」を感じてほしいので、動画はいいですね。動画じゃないと分からない臨場感は、誌面じゃ難しいですから。杉並区の行政広報を見てもらう層が広がったのではないかと思っています。アーカイブ機能としても使えるので、シティセールス的にも使えると思いますね。

広報を行う上での意識や心構え

Q:庁内連携の取り方や意識改革が課題です。庁内の広報力を底上げするための施策は?

:職員の立場で変えるのは難しいですよね。変えるために使えるのは「危機感」だと思います。キーマンである首長に「なんとかしなきゃ」と自覚してもらえるように、私のような外部の者の指摘や住民アンケートなどで、行政広報が機能していないことをはっきりと伝えるのも一案です。
より大変だと思うのは内部の改革でしょうね。私の経験からも「一気には変わらないのでちょっとずつできることをやっていく」というのがいいと思います。まずはちょっとしたアクションを起こすこと。あと、組織の広報力向上には、そもそも行政広報は誰のための事業で、何のためにやっているのかを皆に納得してもらうことが必要です。簡単ではないですが。

Q:目的と手段が混合されて改善に結びつかない。広報の全体図が見えていなくて、場当たり的になっている。

:「目的と手段が混合されて」というのは広報誌を作ること自体が仕事になっている状況だと思います。おそらく、目的が組織で明確化されてないんじゃないですかね。なんのために広報をやるのかというのを皆で共有したほうがいいですね。例えばスローガンを作るとか。杉並区の場合「伝わるの、その先を考えよう」ということで、住民がなるほどねって思えるような情報発信を皆で共有しています。

制作する上での悩み

Q:行政が伝えたい情報と住民が理解できる情報に乖離がある。住民が知りたいことと、行政が伝えたいことにギャップがある。

:これは「広報とは、知らせること」というOne-wayの考えに基づいていますよね。住民が知りたいことを広聴して、行政側が住民に寄り添っていかないと。住民側から行政に寄り添ってくることはまずありませんから。先ほども言ったとおり、広聴と広報はセットです。住民のニーズを知るための意向調査やSNSや催し物でのアンケートなんかも試してみてはいかがでしょうか。

Q:効果的に住民に興味関心を持ってもらえる情報発信法について、具体的な成功事例があれば教えてください。

:杉並区の広報誌15日号の「すぎなみビト」ですかね。杉並って地域活動をされている方が非常に多いんです。そういう方々にスポットを当てた特集を組めば、それが共感を呼んでSNSで伝わり、拡散する可能性が高いと考えました。

読みやすさと伝えたいこと

Q:硬さと伝わりやすさのバランスの取り方は。

:広報誌でもSNSでも、行政なので硬さは確実に必要なんです。ですが、情報を受け取る方の気持ちになると、毎日硬い情報ばかり届いたら嫌になりますよね。私が意識しているのは、意識的に楽しいイベントの情報を増やした上で、硬い情報も入れ込んで全体のバランスを取ることですかね。「常に硬い情報」になるのを避けています。

さまざまな広報戦略

Q:自治体SNSなどでデジタル媒体への登録者増加させるために、どのような取り組みを。

:各SNSの特徴を把握した上で、入り口を増やすことですかね。あとはネタにつきます。見る価値があると思われるネタをコンスタントに発信することですね。

Q:自治体広報はどのように変わっていくか。

:スマホで見られる物にシフトしていくのかなあと思います。もしかしたらスマホに代わる何かが誕生・普及するかもしれませんが。あと、デジタル庁ができるのも影響が大きそうなので、注目しています。紙媒体はすぐにはなくならないでしょうが、縮小傾向にあるとは思っています。いずれにしても、媒体が変わっても受け手のことを考えた情報発信というのが基本だと思いますので、そこは変わりませんね。
今日の話は面白かったなで終わると意味がありません。面白かったと思うところ、気になったところをちょっとでもいいので、ぜひ明日から実践してください。

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以上、2020年11月8日に行った「BK PR MTG 2020 Vol.2 伝わる広報が未来を変える」の開催レポートでした。今回は「受け手のことを考えたコミュニケーション」が大きなテーマになり、複合的な広報戦略の必要性の高まりを実感されたことと思います。
最後になりますが、谷氏、そして日曜日の夕刻にもかかわらずご視聴いただいた皆さま、本当にありがとうございました。次回開催については未定ですので、決まり次第ご連絡差し上げます。

第二回 Speaker

谷 浩明

谷 浩明

東京都杉並区広報専門監/静岡県知事戦略局広報アドバイザー
クリエイティブディレクター(合同会社MACARON 代表)

デザインだけでなくコミュニケーションをデザインすることを主軸とし、NPO・市民団体等の広報活動のサポート、広報研修を多数実施。2016年からは東京都杉並区広報専門監として、基礎自治体の広報活動(広報紙・動画・SNS、広報相談、広報研修など)をサポートしながら他自治体の広報研修も精力的に行う。2020年からは静岡県知事戦略局広報アドバイザーとして広域自治体の広報活動もサポートしている。
広報・情報学修士(MICS)。平成29年度東京都広報コンクールで最優秀賞、平成30年度/令和元年度で二席など受賞歴多数。

BK PR MTG 2020 Vol.2 運営スタッフ
渡邊光恵/糸瀬早紀/脇田真也/増子裕太/
圷香織/高尾圭輔/浅井政利/尾島裕樹/
金丸卓周